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思い出すだけで顔が火を噴く過去の遺物。
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日は傾いて橙色を放ち、今にも山陰に隠れようとしている。
夕日に映るのは小道を歩く二つの影。

「……あの」
「なんだ。小遣いならやらんぞ」

恐る恐る話しかける少女に、男は仏頂面で冗談を返す。
冗談とも取れる言葉だが、声には抑揚が無く淡々としている。
何時も通りなのか、意にも介さない様子で少女は続ける。

「どうしてあの子だけが狙われているって…分かったの?」
「勘だ」

間髪入れず、相変わらずの仏頂面で男は返す。
即座に帰ってきた呆気ない返答に今度は一瞬戸惑うも、少女は再び口を開く。

「子供達が魔物に狙われてるとしか聞いてない……それに、思い当たるのは今回だけじゃないの…」

少女の声は段々小さく、か細くなる。
日は沈み、いつの間にか空は灰色で覆われていた。
男は黙々と歩を進めるだけで、少女に顔を向けて話を聞く様子はない。だが―

「……私にも、何も言いたくないの…?」

搾り出すような弱々しい声。
「絶対に何かを隠してる」とでも言いたげな一言に、男は足を止めた。
少女はここぞとばかりに前に躍り出て、華奢な体を張って道を塞ぐ。


瞳に未来が映ったから
自身がエンドブレイカーと呼ばれる存在だから

『常識では説明の付かない事象』しか正答とはなり得ない。
知ってか知らずか、霞を思わせる表情を一層曇らせて視線を逸らし、跋が悪そうに少女は相対する。

 

「……ああ、面倒臭え。話せば満足するんだな」

長く続いた我慢比べは、溜息混じりの男の言葉により雌雄を決した。

「先に断っておくが―」
先ほど冗談を言った時よりも重く、どこか厳かな口調で男は続ける。
「―ご存知の通り俺はほら吹きだ、この話を信じるかどうかはお前自身で決めろ」

釘を刺し、同時に混乱を促した男は『嘘のような事実』と『事実のような嘘』を騙り始めた―
 

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